先やり防水に適する防水工法の判断基準として、
(1)地下空間での作業となるため「施工の安全性」が確保されること
(2)地下の水圧、土圧に耐え得る「防水層の信頼性」
(3)そして何よりも「後打ちコンクリートへの水密接着性」などが重要であると言えるでしょう。
その観点から、下に各種防水工法を比較検討してみます。

防水工法の種類と先やり防水としての効果

アスファルト防水
概要
先やり防水としての評価
屋根防水としては最も歴史が古く、信頼性の高い防水工法。
地下空間で且つ足場上での熱融解アスファルトを使っての作業は非常に危険が伴い、地下外壁防水としては不適当。
改質アスファルトシート防水
概要
先やり防水としての評価
アスファルト防水の作業上の欠点を補うべく発達した工法。改質アスファルトシートを粘着・トーチ・機械的固定等の方法で張る。
JASS8では地下外壁(後やり防水)にトーチ工法は適合とされているが、先やり防水の場合、セパレーター等シート貫通部の処理が非常に手間を要する。 不安定な足場上で重いシートを張る作業は、非常に危険でもある。 後打ちコンクリートへの水密接着性は、シートの上にゴムアスファルト系塗膜防水材料を塗らないと確保できない。
シート防水
概要
先やり防水としての評価
合成ゴムや塩化ビニル樹脂系のシートを張る工法。
シート状のものはセパレーター等シート貫通部の処理が非常に手間を要し、水圧のかかる地下防水としてはジョイント部の水密信頼性に難がある。後打ちコンクリートへの水密接着性については、塩化ビニルや加硫ゴム系シートは劣るが、非加硫ゴム系シートは優れる。
塗膜防水
概要
先やり防水としての評価
液状の材料を手塗り・吹付け等で塗布し、硬化・成膜することによりシームレスな防水層を形成させる工法。現場施工の為、均一な膜厚確保が重要。
セパレーター等の役物が多い山留め壁面への防水施工としては適している。ゴムアスファルト系はJASS8では地下外壁(後やり防水)に適合とされ、且つ、後打ちコンクリートへの水密接着性にも優れている。しかし、ウレタンゴム系やアクリルゴム系は、後打ちコンクリートへの水密接着性に劣る。
ベントナイト防水
概要
先やり防水としての評価
地中の水分により水和・膨潤し、不透水性のゲル状の防水層を形成させる工法。
地下水が滞留するような土地の地下には適するが、雨水や地下水流によってベントナイトが流失する可能性もあり、防水層としての信頼性に劣る。
ケイ酸質系塗布防水
概要
先やり防水としての評価
表面に塗布しコンクリート中の微細な空隙部を充填して水密性を向上させる工法。
硬化したコンクリートに対して塗る材料なので、先やり防水には本質的に問題がある。