コンクリートを水から守るために
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地下室は常に水の中?

迫り来る地下水パワー。
新小平駅で起きた信じられない事実!

1991年10月、東京のJR武蔵野線・新小平駅で信じ難い事故が発生しました。台風による大雨で地下水が増水し、その浮力で地下の駅舎全体を持ち上げてしまい、線路を分断してしまったのです。この事故により、武蔵野線は2ヶ月間、この手前の駅までの折り返し運行を余儀なくされました。
事故後の調査の結果、駅舎が造られた当時よりも事故当時には地下水位が大幅に上昇していてそこに台風による大雨で一気に水位が上昇し、災害となってしまったのです。


上野駅、東京駅における 「浮力対策工事」とは?

その後、新小平駅の事故を繰り返さないために、各地で地下水位の調査が始まりました。すると驚いたことに上野駅と東京駅で「このまま地下水位の上昇が続くと駅舎が地下水の浮力で持ち上がってしまう」ことが判明しました。
両駅では浮力に対抗するために、各々特殊な工事を行っています。上野駅ではプラットホーム下に3万トンの鉄の「オモリ」を置くことになり、東京駅では1本あたり100トンの浮力に耐えられるアンカー(イカリ)を130本、地盤に打ち込むことになりました。どちらも必要以上に浮かぼうとする建物を押さえつけるための工事であり、まるで「水に浮かぶ船」のようです。
これらの事例から、地下水と言うものがどれほどすごいパワーを持っているのかをうかがい知ることができます。そして、新小平駅も東京駅も、設計当初は地下水位は非常に低かった、と言う点も見逃せません。

地下水位は年々上昇している!?

かつて、都市部においては建築のために地下水を汲み上げ、また、地下水を空調などに大量に利用しながら、開発が進みました。そのため、地下水位が急激に下がり、地盤沈下など様々な社会問題が引き起こされてしまいました。そのため現在では、地下水の揚水規制などの条例が制定され、徐々に水位が回復してきています(グラフ参照)。 新小平駅の事故や、東京駅、上野駅で行なった対策をみてもわかるように、現在地下水位が低い地域でも、将来的には変動してしまう可能性があるのです。 したがって、地盤調査で地下水位が低く検出されても、地下水対策をしておくことが肝要であると言えるでしょう。浮力対策もさることながら船底を防水しない訳にはいかないのですから。

地下水位変動の原因はこんなところにも…

多くの工事現場では、地下水をポンプアップしながら工事を進めます。その時にその現場付近で地下水位を測定すると、かなり低い結果が出るでしょう。これで安心しているととんでもない事態になるかもしれません。その工事が終わり、揚水を止めると、水位は元通りに上昇回復しようとします。 「おかしいなあ…地質調査の時には地下水位は低かったはずなんだけどなあ?」と首をかしげることになるかも知れません。